
第135回 「サンタクロース」 【2014年12月】
クリスマスが近づくと街がイルミネーションなどで鮮やかに飾られて、いつもとは違う幻想的な雰囲気に包まれます。
クリスマスに流れる歌は子供の頃から知っている、懐かしい歌ばかりですね。サンタクロースの出てくる歌も多いです。
子供の頃は本当にサンタクロースを信じていました。
行儀の事や返事の仕方など、普段は細かい現実的な事ばかり言う大人が、クリスマスの夜だけは
「今日はサンタさんが来るから早く寝なさい」
と真面目に言うのは、何だか奇妙に思えることでした。
サンタクロースがそりに乗って空を飛んでやってくるというのはとても不思議で、
「サンタクロースは普段は何をしているの」
「サンタクロースはどうして1日で世界中を回れるの」
など疑問に感じたままの質問をしつこく何度も親にしましたが、すぐには理解しがたいような答えを真剣に返してくれるので、なんだか分からないけれどそういうものなのだとますます固く信じました。
プレゼントをくれるサンタクロースは大好きだけれど、どこかで「怖い」と感じていました。
空を飛べることや、世界中の子供を全部知っていてプレゼントを用意していることから考えて、サンタクロースは少なくとも普通の人間ではなく特別な力を持っている存在に違いなく、そのような人に「とても悪い子だ」と思われてしまったら、プレゼントがもらえなくなるだけではなくとても厳しい罰を受けるようなことがあるのかも知れないと思っていました。
クリスマスの夜は大抵眠れなくてドキドキしながらサンタクロースがいつ来るかと緊張して待っていて、遅いなあ、自分は見捨てられてしまったかもしれないと考えている内に疲れてしまい「サンタさんはきっと許してくれる」と言い聞かせて眠りについたものでした。
不安に過ごした夜が明けて、枕元にプレゼントがきちんと置いてあると本当にうれしくて、しみじみとそれを見つめてそっと開け、プレゼントの包装紙を
「これはサンタクロースの国の、特別な包装紙だ」
と大切にしまっておいたりしました。
成長とともにサンタクロースはいつの間にか来なくなりましたが、クリスマスになると何かが起こりそうなわくわくは、子供の頃胸に描いたサンタクロースの姿がそうさせるのかなと思います。
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