
第147回 「除夜の鐘」 【2015年12月】
もうすぐ年末ですね。
一年も終わりに近づくと、あっという間だったなと思います。
大晦日の夜に響き渡る除夜の鐘を聞く方も多いと思います。
一年の一番終わりの静かな夜に響き渡る鐘の音は、静寂をかき乱す騒音のようにも思えます。
そして除夜の鐘が響いた後には、その夜のもともとの静かさをしみじみと感じさせてくれます。
除夜の鐘は百八回鳴らしますが、これは人の「煩悩」の数といわれています。
仏教でいう「煩悩」とは「人の心身の苦しみを生み出す精神のはたらき」だそうで、具体的には欲望・嫉妬・執着などのことを意味するそうです。
大晦日に除夜の鐘を叩くのは、一年の心の汚れを振り返って取り去り、清らかな心で新年を迎えるという意味があるそうです。
同じ仏教に「輪廻転生」という考え方がありますが、この考え方によると、生き物は「煩悩」のせいで何度も生まれ変わることを繰り返していて、この繰り返しをやめて安らかな世界に行くためには煩悩を捨て去らなければならないそうです。
人の心に付きまとう「煩悩」とは、人の生に対する執着とも捉えることができて、自分がこの世に生きたいという気持ちから他人が憎い・羨ましい・貶めたいという欲が生まれるのかもしれないと思います。
そう考えると、生きながら煩悩を捨て去ることはとても難しいことに思えます。
でも、生活する中で心の中に汚い感情が溜まってくると、だんだんと生きることに息苦しさを感じてきます。
自分の中の煩悩を振り返り、それを「汚い」と改めて感じることで、少しだけ楽に生きることができそうです。
今年も除夜の鐘に耳を澄まします。
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